「八つぁん・熊さんの北アルプス談議」

Chokomaka・小森武夫

カランッ・コロン! カランッ・コロン!     ♪下駄の音♪
 八: イヨッ!熊じゃねぇかッ
 熊: オッ!八っつぁんかッ!久しぶりだねぇーッ!
 八: 仕事の塩梅はどうだい? この間、厚労省の発表じゃあ、男の寿命が、80歳を越えたそうじゃねぇか! 先は長いんだ、あくせくすんのも考えもんだぜッ!
 熊: ヘェーーッ!八っつぁん、物知りだねぇーッ!
 八: あったぼォーーヨッ!こちとらあッ、知らねェーッこと以外は、何でも知ってらぁ!
 熊: アッ!そうだッ!丁度いいや、八っつぁんに聞いてみよう!
 八: ??何んのこってぇーッ!
 熊: この前、茶飲み話でね、その「歳」のことでねェ・・・・・・・。 歳、と言っても、桁違いな話なんだけどねぇ〜〜〜ッ!
 八: ジレッ テェーーなッ! それが、どうした、てぇーーンだい!!
 熊: 「北アルプス」てッ、山があるよね!それが何時頃出来たのか? つまり、今、?何歳なのか?と言うことさ!
 八: ウッ!ムゥーーーーッ!そいつぁー、流石の俺にも判らねぇーなッ! オッ!そうだッ、ご隠居なら知っているかも知れねぇーッ!今から行って見るかッ!

 ガラガラガラァーーーッ!!    ♪玄関の戸を開ける音♪
 八: ご隠居、ご在宅ですかぁーーーッ!
 隠居:「ご在宅」たぁーッ!気の利いたあいさつだねぇーッ!お入りよッ! 婆さんやッ、八っつぁん・熊さんに、御茶をお出ししてくんないかね! 一寸、渋めの方がいいなッ! 
 八: オッ! 「羊羹・茶通に、きんつば」と、きたね! たまんねぇーーッ! 戴きやすッ!
 熊: アレッ?八っつぁんは、辛党じゃあなかったんだっけ?
 八: ハハハハァーーーーッ! おいらは “大谷よッ!”
 熊: ??大谷ーーィッ??
 八: 大谷翔平ッ! 日本ハムの「二刀流」ッ! つまり、甘党・辛党「両党使い」てッ、訳よッ! GAHAHAHAHAーーーッ!
 熊: なぁ〜〜るほど!  うまいねぇーーッ!「座布団1枚ッ!」
 隠居:オイオイオイッ!おまえさん達二人で喋ってねぇーで、用向きは、何んだねぇーッ! まさか、和菓子とお茶を飲みに来た訳じゃあねぇんだろう?
 八: ヘイッ!実は、この熊公が『「北アルプスは、何時頃出来た』なんて言うもんですからね、それじゃあ、ご隠居に聞くのが一番早いやッ!と言うことで、こうしてお邪魔したわけでさぁ!
 隠居:そうかい!丁度、この間、読んだ本にそのあたりのことが書いてあったんで、かいつまんで、話してみようか!
 八・熊:ヘイッ!そいつぁーッ! ありがてぇ!!

 隠居:北アルプスはなツ!
  北は、日本海に面する親不知に始まり、南は、乗鞍岳 (3,026m)・御獄(剣ケ峰3,067m)の二つの火山まで続く、全長120km程の山脈が、連 なっているんじゃ!
  主脈は、白馬・鹿島槍連峰・立山連峰・槍・穂高・常念山脈などがあり、日本アルプスの中で、最も優れた高山景観が展開しているんだ。標高を見ると、日本第三位の奥穂高岳(3,190m)、第五位の槍ヶ岳(3,180m)など、登山者の人気が高いところだ。その他、高さは3,000mを切っているが、「剣岳」なども、「雪と岩の殿堂」などと称されて、登山者の憧れの的らしいのじゃ!
 八・熊:ヘェーーーッ! そんなに人気があるんですか? 北アルプスの地質は、複雑で飛騨帯と呼ばれる、ユーラシア大陸の断片に当たる、片麻岩類と、中世期ジュラ紀に付加した、美濃帯の堆積岩類が、もともとの基盤を作る岩石で出来ているんじゃ!問題の、年数だが、北アルプスが隆起を始めたのは、最近の研究によ れば、およそ200万年〜300万年前だそうだ! 
『だから、北アルプスの「年齢」は、200万歳と言うことじゃなッ!』  

 八・熊:ヘェーーーッ! 200万年前ですか????
 熊: フウウゥ〜〜ン!てぇーとッ!我々の寿命が、80歳に伸びた、なんちゅうのは、屁みてぇーーなもんですね! 
 八: あったぼぉーーーよッ! ご隠居さん、するてぇーとッ! それから、次第に上へ上へを盛上がった、てぇことですね!  3,000mかぁ!凄ぇーーなッ!山が、高くなったり、陸地が沈んだり、しているんだ!
 隠居:うまいところに気が付いたなッ! 地球には地殻があって、それが動いているんだ!だから、地震も起きれば、火山が噴火もする。しかし、長い年月を経て変化しているのだから、我々の生活には特に問題はないんだ!

 隠居:ついでに、「気象」について教えておこう!
北アルプスは、日本海に近いため、積雪が多く、その分残雪も多い、日本三大雪渓と呼ばれる「白馬大雪渓」「剣沢大雪渓」「針ノ木大雪渓」は、いずれも北アルプスにあり、他にも、谷筋や稜線に、大小の雪渓や雪田が無数にある。 残雪の周囲には雪融けとともに、お花畑が次第に広がり、それが登山者の目を愉しませているのだ。 寒冷な「氷河期」には、日本アルプス全域で、氷河が発達したが、最も顕著なのが、北アルプスであった。これは氷河が、日本海からもたらされた、積雪によって、涵養されたもので、氷河の分布は北アルプスが圧倒的に広範囲になっている。日本アルプスで、氷河が、発達した時期は、最終氷河期の前半、およそ6万年前と、後半の2万年前の2回あるが、もっとも拡大したのは、前半なのだ。この時期、氷河は、白馬岳付近では、海抜1,300m位まで低下し、穂高でも、横尾付近まで延びていたらしい。  
一方、2万年前になると、大陸氷河の発達によって、海面が著しく低下し、対馬暖流は、もはや日本海に流入することは出来なくなった。このため、気候はもっと寒冷であったが、積雪が現在の三分の一程度に減少したため、氷河の発達は抑制されて、カール内にほぼ限られ、北アルプス最北部にある白馬岳あたりを除けば、大きな氷河が延びることは無かった。

 隠居:雪の多いメカニズムはな!
北アルプスは、東シベリアからモンゴル高原にかけての地域は、冬、放射冷却が効いて、地表面温度がマイナス数十度と極端に低くなる、その結果、冷たい地面に接した地表付近の空気も冷やされ、重くなって高気圧の寒気団が生じる、この寒気団は南へ流れ出そうとするが、ヒマラヤ山脈やチベット高原によって流出を妨げられる、寒気は厚く集積して日本海方向へ流出する。
一方、日本海に流れ込む対馬暖流は、冬も暖かく、寒気よりも10℃も温度差が高い、そこで、海面から水蒸気が盛んに蒸発する、また、寒気は海面から直接暖められるのと、更に蒸発によって生じた気化熱でも暖められて、上昇を始める。
 日本列島付近に低気圧が発生し、北海道東方で発達して、「西高東低」の気圧配置に向かって強い風が吹き出し、日本海から水分をたっぷり吸った「筋状の雲」を発生させる、これが、冬の北西の季節風なのだ。寒気層の厚さは、3,000m程度に過ぎないが日本列島の中央部にある脊梁山脈は2,000m〜3,000mの高さをもつため、寒気が山を乗り越える際の上昇によって水蒸気は凝縮し、大量の降雪が日本海側の山地に持たされる、これが大雪のメカニズムなんだな!

 隠居:今日は、こんなもんで、どうかな!
 八 :ヘイッ!有難う御座いました。 流石!ご隠居は、てぇーしたもんだ!オッ! 陽が傾きだしやしたぜぇッ! 熊、おいとましようぜッ!
 熊 :ヘヘヘッ、これで、相棒に鼻が高くなれるてッ、もんだ! ご隠居、有難う御座いました。
   夕焼け空にカラスが二羽、 カァーーッ カァーーッ!     
 完

(ことば)
カール:氷河の浸食作用によって山頂近くにできた半円形の窪地。 圏谷(けんこく)
モレーン:堆石,氷堆石とも。氷河が地面を浸食して生成した岩屑(がんせつ)を運搬堆積して形成した小丘地形。氷河の末端に体積する。★槍ヶ岳のグリーンバンドなど

 【参考文献】
「日本山学誌」 日本山岳会編著 ナカニシヤ出版
「日本山岳ルーツ大辞典」 監修:池田末則 編著:村石利夫  竹書房

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